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小倉百人一首 第三十二番 春道列樹(はるみちのつらき)

志賀の山越えにてよめる

山川(やまがわ)に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり(古今303)

【通釈】山中の谷川に風がかけたしがらみは、実は流れようとしても流れきれない紅葉であったよ。

ここまで

【語釈】
*「志賀の山越え」:京都の北白川から比叡山・如意が岳の間を通り、志賀(大津市北部)へ抜ける道。天智天皇創建になる崇福寺を参詣する人々が往来した。
崇福寺跡 http://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/3909
*「山川(やまがわ)」:山中の川。谷川。「やまがわ」と読む。「やまかわ」と読むと、「山と川」の意味になる。
*「風のかけたるしがらみ」:「しがらみ」は「柵」と書く。流れをせき止めるために、川の中に杭を打って、竹などを横に編んだり結びつけたりしたもの。
参考ページ→『思考の部屋』http://blog.goo.ne.jp/sinanodaimon/e/ec79ad4f351df07c639fed6ec8b0bc52
「風」を擬人化している。
*「流れもあへぬ」 流れようとしても流れない。風に散った紅葉が川にしがらみをなしている情景。

<感想>
平易な調べの中に複雑な技法を何重にも織り込んでいる歌です。この歌を見ると、色鮮やかな紅葉が川の底などに引っかかってなかなか流れない目に鮮やかな状況を思い浮かべてしまいます。
この方は若くして亡くなったそうですが、文章生を経て、壱岐守になっているので、かなり頭脳明晰な方だったのではと思います。
それでいてこんなに優しく色彩豊かな歌を詠まれるなんて、とても気になる存在です。
余り政治的な事績は残されていませんが、勅撰集に僅かに残された和歌が存在感を放つ静かな歌人です。
そういう人をきちんと掬いあげて百人一首に採用し、現在にも春道列樹さんの息吹を伝えてくれた藤原定家さんに感謝です。

<略歴>

<基本データ>
春道列樹(はるみちのつらき)

*生没年 ?~920 延喜十年(910)に文章生となっているため、享年は20代か。
*父:雅楽頭 新名 *母:未詳 
*春道氏は物部氏の末流。(「右京人因幡権掾正六位上 物部門起 賜姓 春道宿禰『三代実録』貞観六年五月十一日条)
*『古今和歌集』3首、『後撰和歌集』に2首入選。
*『古今』撰者時代の歌風を代表する歌人。

詳しい略歴はこちらから。


参考:鈴木日出男 他『原色 小倉百人一首』(文英堂)、千人万首「春道列樹」

2015年6月29日 葉つき みかん
2016年3月27日 解説完了



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