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小倉百人一首 第十三番 陽成院

釣殿の皇女(みこ)につかはしける

筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる 男女川(みなのがわ) 恋ぞつもりて 淵となりぬる(『後撰集』・恋三・七七八)

【通釈】
釣殿の皇女(光孝天皇皇女・綏子内親王)に送った。
「筑波嶺の峰から流れてたぎり落ちてくる男女川の様に私の恋心は積もり積もって深い淵の様になってしまいました。」

【語釈】
*釣殿の皇女(みこ):光孝天皇の皇女・綏子内親王。後に陽成院の妃となる。

*「筑波嶺(つくばね)」:常陸国(茨城県)の筑波山。山頂が男体山と女体山の二つに分かれている。『万葉集』以来よく和歌に詠まれた。古代には歌垣(春と秋に男女が集まって神を祭り歌を詠みあう行事。今でいう合コン。)の行われた場所として良く知られていた。→男女の出会いの歌枕を入れ込んで、恋愛の雰囲気を醸し出しす目的があったのかな?

*「峰より落つる」:山頂から流れ出した水が激しくたぎり落ちている様子。「嶺」と「峰」を重ねて山の高さを強調。

*男女川(みなのがは):男体山と女体山の二つの峰から流れ出るのでこう呼んだ。ここまでが「序詞」。

*「恋ぞつもりて」:恋情が次第につもりつもって。

*「淵となりぬる」:「淵」は流れが淀んで深くなったところ。川の流れが深い淵となっている風景と、恋心が積もり積もって深くたまっている心情との、二重の文脈を作る。

【解説】
粗暴ゆえに十七歳で藤原基経により退位させられた陽成院が、退位後に光孝天皇皇女綏子内親王に向けて詠んだ歌です。
男女の出会いの場である歌垣が開催され、男体山と女体山という男女の出会いを示唆するような峰の名を持つ筑波山を巧みに織り込み、綏子内親王の心へ訴えかけています。
この巧みさは在原業平の情熱へも通じそう…。

【略歴】
後日追加します。

2015年7月4日 葉つき みかん
参考:鈴木日出男 他著『原色 小倉百人一首』(文英堂)


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